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取締役の任期と定款変更

取締役の任期のことでお悩みではございませんか

取締役の任期は2年や10年などとおおまかに表現されることも多いですが、実際には2年ピッタリというわけではありません。
また、定款の定めによって在任中の取締役と任期が揃えられるケースや、特定の定款変更をした際に取締役の任期が満了するケースなどもございます。

今回は、様々なケースでの取締役の任期の取り扱いについて記載いたします。

原則として、取締役の任期は定時総会で満了する

会社法の条文では、取締役の任期は原則として「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」とされています(会社法332条1項)。

つまり、ピッタリ2年後ではなく、2年内に終了する最終の事業年度に関する定時総会が終わった時に任期が満了することになります。

これは、たとえば決算期が3月末で毎年定時総会を6月に開催している会社が、期中の10月に臨時株主総会で取締役を選任したような場合に、取締役の任期をピッタリ2年後としてしまうと、その取締役の任期は2年後の10月に任期が満了してしまうため、また中途半端な時期に臨時株主総会を開催する必要が生じてしまいます。
このような不都合を回避するために、一律定時総会で任期が満了するように定められています。

定款で補欠増員規定が定められていることが多い

現実には、取締役の任期に関して「補欠または増員により選任された取締役の任期は、他の取締役の任期の残存期間と同一とする。」と規定されている場合が多いです。
補欠増員規定と呼ばれる規定です。

これも、取締役の任期が満了するタイミングを揃えるための方法のひとつです。
任期中に取締役のうち一部の方が辞めることになるため後任者を選任した場合や、新たに増員として取締役を選任した場合に、そこから通常通り任期をカウントすると、その選任された取締役だけ任期が長くなってしまうことが起こり得ます。

そうなってしまうと、別々の年度の定時株主総会でそれぞれの取締役について改選の決議をおこなう必要が生じてしまいます。

このような手間を回避するために、多くの会社で上記のような補欠増員規定を定款で定めています。

取締役の任期は定款または株主総会で短縮することができる

先ほどの補欠増員規定は、結果的に新たに選任された取締役の任期を短縮することで、他の取締役と任期満了のタイミングを揃える規定です。

このような取締役の任期の短縮については、会社法に「定款または株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない」との定めがあるため、認められています(会社法332条1項ただし書き)。

このように取締役任期の短縮が認められているので、補欠増員規定だけでなく、あえて一律取締役の任期を「選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と1年サイクルに短縮することも可能です。

※監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社では、法定の任期が「選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」となります。

非公開会社では取締役の任期を伸ばすこともできる

取締役の任期の短縮について記載してきましたが、非公開会社では逆に取締役の任期を「選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」を限度として伸ばすことも認められています。
(監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除きます。)

取締役の人数が少ない1人会社や家族会社などでは、取締役の改選を頻繁に行うことは単なる手間になってしまうケースもありますので、そのような場合に会社の改選の手間を軽減するために非公開会社については任期を伸ばすことが認められています。

定款変更によって在任中の取締役の任期に影響を与えることもある

これまで記載してきたように、取締役の任期は定款の定めによって短縮したり伸ばしたりすることができます。
また、法定の任期の規定が「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」とされているように、事業年度の定めとも関連しています。

そのため、定款の取締役の任期に影響を与える箇所を変更した際に、在任中の取締役の任期も影響を受けることになります。

定款を変更して取締役の任期を伸ばした場合には在任中の取締役の任期も伸びることになる

定款を変更して取締役の任期を伸ばした場合、反対の意思表示があるなど特段の事情がない限り、在任中の取締役の任期も伸びることになるとされています。

そのため、任期満了となるはずの定時総会で、任期を伸ばす定款変更を行うと、在任中の取締役の任期も伸びるため、伸ばした後の任期が満了するまで退任しないことになります。

※これまで記載してきたように、任期満了のタイミングが定時総会「終結時」なので、このような定款変更によって定時総会中(任期満了前)に定款変更の効力が生じ、その定時総会では任期満了しない結果となります。

定款を変更して取締役の任期を短縮した場合には在任中の取締役の任期も短縮されることになる

定款を変更して取締役の任期を短縮した場合には、在任中の取締役の任期も短縮されることとなります。

在任中の取締役の任期が短縮されたことにより、既に任期が満了していることとなる場合はどのようになるのでしょうか。

このような場合は、過去にさかのぼって任期が満了していたことになるのではなく、任期を短縮する定款変更をした時に任期が満了したものと取り扱われます。

※実質的には解任と同様の効果をもたらしますが、任期満了と取り扱って差し支えないとされています。

そのため、通常はこれまで記載した通り取締役の任期は一律揃えられているため、取締役を再度選任する決議も行っていただき、その登記をおこなっていただくことになります。

※補欠増員規定がなかった会社が、新たに補欠増員規定を設けた場合も、定款変更前に補欠や増員で選任された取締役の任期にも効力を及ぼすことになります。

事業年度の変更によっても取締役の任期が影響を受ける

取締役の任期は「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」というように、一定の期間内に終了する事業年度のうちの最終のものを基準に決定されます。

そのため、事業年度を変更すると在任中の取締役の任期の基準となっている最終の事業年度が繰り上がることがあり得ます。

※事業年度は1年を超えることはできませんが、事業年度の末日を変更する場合において、変更後の最初の事業年度に限り、1年6か月以内の期間とすることができます(会社計算規則59条2項)。

このような場合には、在任中の取締役の任期も短縮されることとなり、定款変更によって既に任期が満了していることとなる場合には、やはり定款変更時に任期が満了することになります。

特定の定款変更を行った際には取締役の任期が満了する旨が会社法に定められている

一定の事項について定款変更を行った場合には、その時に取締役の任期が満了する旨が会社法に定められている事項もあります。

次の事項について定款変更を行った際には取締役の任期が満了する点に注意が必要です(会社法332条7項)。
・ 監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の変更
・ 監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更
・ 非公開会社から公開会社となる定款の変更
(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社がする場合を除く。)

このような場合も、取締役全員が任期満了することになりますから、取締役の選任の決議をあわせて行うことが必要となります。

通常の任期管理だけでなく定款変更の際も取締役の任期への影響を考慮ください

取締役の任期の管理はとても大切です。
特に事業年度を変更される際などは見落としやすいですが取締役の任期への影響に注意が必要です。
ご参考にしていただけますと幸いです。

 

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