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債権者保護手続きにおける個別催告

債権者保護手続きにおける個別催告についてお悩みではございませんか

資本金の額の減少(減資)の手続や、吸収合併等の組織再編の手続の場面では、多くの場合債権者保護手続きが必要となります。
この債権者保護手続きは官報公告及び個別催告の手続を行うことが原則とされておりますが、この個別催告手続きについて実際どこまで催告書を送るのかというところに悩まれる方も多いです。

今回は、債権者保護手続きにおける個別催告について記載いたします。

会社法令上は個別催告の対象者は知れている債権者と定められている

会社法の文言上では、個別催告の対象者は「知れている債権者」としか定められておらず、それ以上の限定はされていません。(会社法449条、779条、789条、799条、810条、816条の8)

そのため個別催告の対象となる「知れている債権者」とは、どんな債権者も含まれるように読めますが、現実問題としてどこまで催告書を送付すべきかについて悩むケースが多いです。

債権者保護手続きの個別催告については実務上少額の債権者への催告は行わない

債権者保護手続きの個別催告について、次のような判例に基づく文献があります。

債権者保護手続が終了するとは、手続きが一応終了すればよいのであって(最判昭和42・2・17判時481号124頁)たとえば、知れている債権者に対する格別の催告に一つでも漏れがあれば終了していないことになるわけではない。手続きの瑕疵は、資本金の額の減少の無効事由となるに過ぎない。(江頭会社法第8版 724頁)

実務上、少額の債権者には催告をせず、その債権者が異議を述べ、または訴訟(資本金の額の減少無効の訴え等)を提起してきた場合に、弁済することで片付ける(訴えは却下になる)例が多い。(江頭会社法第8版 730頁)

※少額の債権者には催告はせずに債権者保護手続きは一旦終了し、万が一無効の訴えを提起された場合には弁済することで無効の訴えの原告適格が消失するので、結果的に無効の訴えは成就しないということです。

このように実務上ではありとあらゆる債権者に個別催告を行うことは困難であることは織り込み済みで、会社が少額の債権者を除いた債権者に催告を行った時点で、「知れている債権者に対する格別の催告に一つでも漏れがあれば終了していないことになるわけではない。」との考えの下、債権者保護手続きは一応終了され、減資や組織再編の効力は発生したとして手続きを進めます。

(後は無効の訴えの問題として処理するとされていますが、少額の債権者から訴えられることは現実的にはほとんど考えられません。)

金額以外の債権者保護手続きの個別催告の送付先の判断材料

具体的に個別催告の送付先を選定するにあたり、金額の他にも次のような判断材料があります。

知れている債権者は、金銭債権者には限られないが、弁済・担保提供・財産の信託の方法により保護し得る債権を有する者に限られる。従って、将来の労働契約上の債権、継続的供給契約上の将来の債権等の債権者は、これに含まれないと解すべきである(実務相談5巻187頁。反対、大判昭和10・2・1民集14巻75頁[電力の継続的供給債権者が含まれるとする])。(江頭会社法第8版 730頁)

知れている債権者は、金銭債権者に限らないとされておりますので、大口の取引先にも債権者保護手続きを行う場合には納入先も選択肢になり得る点に注意が必要です。

従業員が知れている債権者に含まれるかどうかについては、「将来の労働契約上の債権、継続的供給契約上の将来の債権等の債権者は、これに含まれないと解すべきである」とあることから特段の事情がない限り含まれないと考えます。

無効の訴えが取締役や監査役から提訴されると便宜的措置が取れない

無効の訴えは、レアケースですが自社の取締役、監査役や株主から提訴されることもあり得ます。

取締役・監査役・株主等が債権者の異議手続の懈怠を理由に資本金の額の減少無効の訴え等を提起した場合には、そうした便宜的措置では処理できない。(江頭会社法第8版 730頁)

便宜的措置とは、弁済して無効の訴えの原告適格を失わせる処理のことです。
取締役・監査役・株主等が無効の訴えを提起した場合には弁済の方法で原告適格を失いません。
例えば、監査役が監査を通して債権者保護手続きの懈怠を問題視するようなことも考えられますので、実務上少額の債権者には個別催告をしないことが多いとは言っても、内部的に懈怠を指摘されるほどに個別催告の対象を絞りすぎないように注意が必要です。

官報と定款所定の方法で二重に公告することで個別催告を省略できる

債権者保護手続きにおいて、官報だけでなく、定款で定める公告方法(時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙又は電子公告に限る)も併せて二重に公告することによって、個別催告を省略することができます。
いわゆるW公告と呼ばれる方法です。

この方法を用いることで、個別催告自体を省略することができるため、個別催告送付先の選定といった問題は考えなくて良いことになります。
(会社分割の場合の、不法行為によって生じた債務の債権者を除く。)

もちろんW公告の方法は、その分公告費用は高額になるため、どちらが負担やリスクが少ないか検討することが大切です。

債権者保護手続きの個別催告については金額や規模を踏まえて判断することが大切

債権者保護手続きの個別催告の送付先の判断については、会社の規模も踏まえて考えることも大切です。規模が大きくなり債権者の人数が増えれば、無効の訴えなどを提起されるリスクも増えるからになります。
そのような場合はW公告も選択肢としてご検討ください。
ご参考にしていただけますと幸いです。

 

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