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募集株式の発行(増資)における株主割当てと第三者割当て(非公開会社)

募集株式の発行(増資)における、株主割当てと第三者割当ての違いについてお悩みではございませんか

一般的には第三者割当ての方法による募集株式の発行(増資)が行われることが多いですが、株主間の保有比率を維持したまま募集株式の発行(増資)を行いたい場合などに、株主割当ての方法が用いられることがあります。

株主割当ての場合と第三者割当ての場合では、手続きのスケジュールにも違いが生じます。
募集株式の発行(増資)を行っていただく際には、手続きのスケジュールについての確認も大切です。

今回は、主に非公開会社での募集株式の発行(増資)における、株主割当てと第三者割当ての違いについて記載いたします。

株主割当てによる募集株式の発行(増資)とは、株主に株式の割当てを受ける権利を与えてする募集株式の発行(増資)

株主割当てによる募集株式の発行(増資)とは、株主に株式の割当てを受ける権利を与えてする募集株式の発行(増資)のことです。

この株主に対して与える割当てを受ける権利は、持ち株数に応じて権利を有することとされています(会社法202条2項本文)。

たとえば、株主A10株、株主B20株、株主C30株という株主構成の状態であれば、持ち株数に応じて、株主Aに100株、株主Bに200株、株主Cに300株の割当てを受ける権利を与えるといった方法が、株主割当てによる募集株式の発行(増資)になります。

このため、たとえば上記の状態で株主ABC3名に100株ずつ割当てをしようとするときは、株主割当てではなく、第三者割当ての方法によるべきということになります。

また、たとえば既存の株主の一部の株主Aにだけ株式を割り当てる前提で行う募集株式の発行(増資)も第三者割当てということになります。

※なお、株主割当てによって株主が割当てを受ける権利を有することとなった株式の数に1株未満の端数が生じた場合には、これを切り捨てるものとされています(会社法202条2項ただし書)。

株主割当ての方法では申込期日の2週間以上前までに株主への通知が必要

株主割当ての方法で募集株式の発行(増資)を行う場合には、原則として申込期日の2週間前までに株主に対して通知を行う必要があります(会社法202条4項)。

株主は、株主割当ての方法による募集株式の発行(増資)によって株式の割当てを受ける権利を与えられますが、その権利に基づき募集株式の発行(増資)に申し込みをするかどうかは株主の自由です。

申込期日までに申し込みを行わなかった場合、その株主は株式の割当てを受ける権利を失います。
このことから、うっかり権利を失権してしまうといったことを防ぐために、申込期日の2週間前までに通知することが定められています。
※そのため、株主全員の同意があれば、この2週間の期間を短縮することも可能です。
この場合には、総株主の同意書と株主リストも登記の添付書面となります。

一方、第三者割当ての方法では、非公開会社においては2週間以上もの期間を設けた通知などは求められていません。
※公開会社においては、第三者割当ての方法で取締役会決議において募集事項を定めて(有利発行のため株主総会から委任を受けた場合を除く)募集株式の発行(増資)を行う場合には、払込期日(または払込期間の初日)の2週間以上前までに、株主に対して募集事項を通知する必要があります(会社法201条3項・4項、会社法210条)。

非公開会社において第三者割当の方法によって募集株式の発行(増資)をする場合に求められるのは、払込期日(または払込期間の初日)の前日までに行う、引受申込者に対する割り当ての通知になります。

このように、非公開会社においては、株主割当ての方法と第三者割当ての方法では、原則として手続きに必要な期間が異なりますので注意が必要です。

株主割当ての方法では割当決議は不要となる

第三者割当ての方法による募集株式の発行(増資)の基本的な流れは、募集事項の決定、引受の申込、株式の割当て、出資の履行となります。
この株式の割当ては、非公開会社では会社の機関設計に応じて、原則として株主総会または取締役会の決議によって決定します。

一方、株主割当ての方法による募集株式の発行(増資)においては、上記の株式の割当ての決定の決議は不要です。
募集事項の決定の段階で、株主の持ち株数に応じて株主に割当てを受ける権利を与えているので、その中から再度割当てに関して決議することは不要ですし、そのような方法で株主の権利を奪うこともできないからになります。

第三者割当ての場合と株主割当ての場合では必要となる種類株主総会が異なる

種類株式を発行している会社で募集株式の発行(増資)を行う場合には、種類株主総会が必要になる場合があります。
第三者割当ての方法による場合と、株主割当ての方法による場合とでは、必要になる種類株主総会が異なります。

第三者割当の方法による場合には、原則として募集株式の発行(増資)の手続きによって発行することになる種類株式(その種類株式が譲渡制限の定めがある場合に限り)の種類株主総会が必要となります(会社法199条4項)。
※定款に定めれば、種類株主総会を不要とすることも可能です。

非公開会社ではすべての種類の株式に譲渡制限が付されていますので、定款の定めがなければ発行することになる種類株式の種類株主総会が必要となります。

たとえば、普通株式とA種優先株式を発行している非公開会社が、新たに第三者割当ての方法でA種優先株式を発行する場合には、(定款に定めがなければ)A種優先株式の種類株主総会の開催も必要になるということになります。

一方、株主割当ての方法による場合には、会社法322条に基づく損害を及ぼすおそれがある場合の種類株主総会が必要となります(会社法322条)。
※定款に定めれば、種類株主総会を不要とすることも可能です。
そのため、発行する種類株式とは別の種類の種類株式の種類株主総会が必要となることもあり得ます。

たとえば、普通株式とA種優先株式を発行している非公開会社が、新たに株主割当ての方法によってA種優先株式を発行する場合には、損害を及ぼすおそれのある種類株式の種類株主総会が必要となります。

A種優先株式を新たに発行することは、普通株式の株主にとって損害を及ぼすおそれがあると考えられるケースが通常かと存じますので、このようなケースでは普通株式の種類株主総会が必要になるケースが多いと考えられます。
(ただし、損害を及ぼすおそれについては、個別具体的にご検討ください。)

このように、第三者割当てと株主割当てでは、必要となる種類株主総会の根拠が異なりますので、それぞれご検討の際にはご注意ください。

株主割当てと第三者割当てでは手続きに違いがありますのでご検討の際はご注意ください。

株主割当てと第三者割当てでは、それぞれ必要となる手続きやスケジュールが異なります。その違いをよくご確認いただき、スケジュールを組んでいただくことが大切です。
ご参考にしていただけますと幸いです。

 

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