株主総会の資料の電子提供制度がはじまりました。
令和4年9月1日より、株主総会の資料の電子提供制度が開始されました。
これにより、電子提供措置の制度をとる旨を定款で定めることで、電子提供制度を利用できますが、その場合には登記も必要となります。
また、上場会社などの振替株式を発行している株式会社は、電子提供制度の利用が義務付けられており、施行日である令和4年9月1日に電子提供措置をとる旨の定款変更があったものとみなされました。
これは、上場会社などの振替株式を発行している株式会社は、不特定多数の株主がいることが通常であり、インターネットを利用した情報提供の促進の先頭にたってほしいとの理由からで、この場合も登記は必要となります。
今回は、ついにスタートする株主総会の資料の電子提供制度について、登記の側面もふくめて記載していきます。
株主総会の資料の電子提供制度の概要
株主総会の資料の電子提供制度とは、ホームページなどのウェブサイトに株主総会の資料を掲載し、株主にはそのウェブサイトのアクセスURLを記載した書面を通知することで足りるとする制度です。
まったく書面による通知が不要となるわけではなく、アクセスURLを記載した書面を郵送することになります。
それでも、参考書類などはインターネットを利用する方法で提供すればよく、印刷や郵送が不要となります。
※株主からこれまで通りの書面での交付を請求(書面交付請求)された場合には、参考書類も書面で提供する必要があります。
これによって、株式会社は印刷や郵送などのための作業の手間を削減することができるようになり、その分充実した内容の株主総会資料が提供されるといったメリットが期待されています。
定款には電子提供措置をとる旨だけ定めれば足りる
電子提供制度を利用するためには、定款の定めが必要となります。
このとき、定款には「電子提供措置をとる」ということだけ定めればよいとされていて、実際に株主総会の資料などを掲載することになるウェブサイトのアドレスなどを記載する必要はありません。
ウェブサイトのアドレスまで定款に記載する必要があるとすると、アドレスを変更することになるたびに定款変更が必要となってしまうので、そこまで記載する必要はないとされています。
上場会社などの振替株式を発行している株式会社では電子提供制度を利用しなければならない
上場会社などの振替株式を発行している株式会社では、定款に電子提供措置をとる旨を定めて、電子提供制度を利用することが義務付けられています。
上場会社などの振替株式を発行している株式会社では、その株式はいつも売買されており、不特定多数の株主がいます。
そのため、インターネットを利用した情報提供を促進するという電子提供措置の制度の目的が特に期待されているためになります。
このように、もともと上場会社などをメインターゲットにした制度だと言えます。
上場会社などの振替株式を発行している株式会社では定款の変更決議をしたものとみなされた
上場会社などの振替株式を発行している株式会社では、電子提供制度に関する部分の施行日である令和4年9月1日に、電子提供措置をとるという定款変更決議をしたものとみなされました。
電子提供制度を利用するために上場会社が定款変更手続きを行う負担を軽減するために、このような定款変更決議をしたものとみなすこととされました。
(実際には、事前に令和4年9月1日をもって電子提供措置をとる旨の定款変更をするという決議をしている上場会社も多いようです。)
ただし、定款変更決議をしたものとみなされる令和4年9月1日時点で上場会社などの振替株式を発行している株式会社において、実際に電子提供制度を利用できるのは令和5年3月1日以降に開催される株主総会からとなります。
定款変更決議をおこなったとみなされた場合でも登記申請は必要になる
上場会社などの振替株式を発行している株式会社が、定款変更決議をおこなったとみなされた場合でも、電子提供措置をとる旨の登記手続きは申請していただく必要があります。
(登記簿謄本は自動的には書き換わりません。)
この登記手続きは、令和4年9月1日から6か月以内に登記申請すればよいとされています。
(令和4年9月1日から6か月以内に、他の登記を申請する場合には、その登記とあわせて電子提供措置をとる旨の登記申請も行う必要があります。)
令和4年9月1日より前にあらかじめ電子提供措置をとる旨の定款変更決議をおこなった場合も、同様に令和4年9月1日から6か月以内に登記申請すればよいとされています。
(他の登記を申請する際には、あわせて行う必要がある点も同様です。)
この場合には、株式会社の代表者が作成した施行日において振替株式を発行していることの証明書を添付して登記申請します。
登録免許税は、申請1件につき3万円となります。
上場会社などの振替株式を発行している株式会社でなくても任意に電子提供措置をする旨を定款に定めることができる
令和4年9月1日に定款変更決議をしたものとみなされる上場会社などの振替株式を発行している株式会社以外の株式会社でも、株主総会の決議により定款を変更することで電子提供制度を利用することができます。
任意に株主総会で定款変更決議をおこなった場合には、定款変更の効力発生日から2週間以内に登記申請が必要になります。
この場合、定款変更決議を行った株主総会議事録および株主リストが登記申請の添付書面となります。
登録免許税は、申請1件につき3万円となります。
令和4年9月1日以降に、新規上場をする場合など、あらたに振替株式を発行することとなる場合でも、株主総会で定款変更決議をする必要があります。
公開会社ではない株式会社でも電子提供制度を利用することができるとされており、制度のメインターゲットである上場会社などではない株式会社も、株主総会の招集に際しての印刷などの手間や費用を軽減するために利用することも考えられます。
電子提供制度の登記を忘れずに
電子提供制度は、株主総会に際しての資料の印刷や郵送の手間を大幅に削減することができる便利な制度です。
ご利用の際には登記が必要となりますのでご注意ください。
ご参考にしていただけますと幸いです。