株式に1株未満の端数が生じる場合の処理方法にお困りではありませんか
株式の分割や併合、吸収合併の対価の交付などの場面で、計算上1株未満の端数が生じる場合があります。
計算上1株未満の端数が生じてしまった場合、どのように処理されるのでしょうか。
今回は、この計算上1株未満の端数が生じた際の計算及び処理のポイントを纏めてみました。
1株未満の端数株式は認められていない
現行の会社法では1株未満の端数を認めていないため、株式の分割や併合、吸収合併の対価の交付などの場面で計算上1株未満の端数が生じることになる場合でも、実際に0.1株といった端数の状態の株式は存在できません。
※端株制度があった時代に1株未満の端株となった株式は、そのまま存続できるとされています(会社整備法第86条)。
そのため、「発行済株式総数160.15株」といった記載がされた会社謄本を見かけることもあります。
これは端株制度があった時代に生じた端数がそのまま存続しているからで、現在の制度の下では新たに株式数に1株未満の端数が発生することはありません。
1株未満の端数が計算上生じる場合の処理
まずは、株主が1人のシンプルなパターンを例にみてみます。
発行済株式総数3,030株で株主が1人の会社にて、100株を1株の割合で株式併合したとします。
計算上「3,030÷100=30.3」となりますが、1株に満たない端数の0.3株は切り捨てられます。
そして、株式併合後の発行済株式総数は30株となります(会社法第234条、第235条)。
次に、株主が複数の場合に1株未満の端数が生じた場合の処理をみてみます。
株主が3人で、持ち株数は次のようになっている場合を考えてみます。
株主A:1,335株
株主B:1,125株
株主C: 570株
この状態から、100株を1株の割合で株式併合したとします。
まず、株主A、株主B、株主Cそれぞれについて併合の割合から併合後の持ち株数を計算します。
計算上は、次のようになります。
株主A:1,335÷100=13.35
株主B:1,125÷100=11.25
株主C: 570÷100= 5.7
それぞれの計算の結果に1株未満の端数が生じています。
先ほどとは違い、この「0.35」「0.25」「0.7」について、すぐに切り捨てるわけではありません。
そのまま切り捨てるのではなく、それぞれの端数を合計してその合計数に1株未満の端数がある場合には、それが切り捨てられます。
今回の場合では、それぞれの端数を合計すると「0.35+0.25+0.7=1.3」となり、その合計数「1.3」のうち1株未満の端数0.3株が切り捨てられます。
それでは、切り捨てた後の残りの1株はどのように取り扱われるのでしょうか。
この1株は競売されるか裁判所の許可を得て任意売却されることになります。
そして、この売却代金がそれぞれの株主に対して生じた端数に応じて分配されます。
端数が発生しないように調整することが多い
この裁判所の手続きは株価の鑑定評価書の提出を求められるなどの手間がかかりますし、株主が増加する可能性もあります。
※任意売却の買受人には、会社自身もなることが可能ですが、財源規制がある点に注意が必要です。
現実的には、裁判所での手続きの手間や株主が増加する可能性を考えて、できる限り1株未満の端数が生じないように、調整・工夫をすることが一般的です。
例えば、事前に株主間で株式譲渡を行い持ち株数を調整する、吸収合併を行う前に株式分割を行っておく、といった方法が考えられますが、それぞれのケースに応じて慎重にご検討いただくことが望ましいです。
株式分割や併合、吸収合併などを行う場合には、1株未満の端数が発生しないかどうか、よくご確認いただくことをお勧めいたします。
あえて端数を発生させるケースもある
先ほどまで、1株未満の端数をなるべく発生させないように調整することが一般的とお話ししてきましたが。あえて1株未満の端数を発生させるケースもあります。
1株未満の端数が切り捨てられる事を利用して、少数株主を会社から退場させる、いわゆるスクイーズアウトを行うケースです。
この方法をとることで少数株主を会社から強制的に退場させることができますが、手間のかかる裁判所の手続きも発生するため、より慎重な検討が必要となります。
株主割当ての方法による募集株式の発行では端数の問題は生じない
株式の分割や併合などの場面では、これまで説明してきた端数の処理の問題が生じる可能性がありますが、株主割当ての方法による募集株式の発行(増資)場合には1株未満の端数の問題は発生しません。
「株主(当該株式会社を除く。)は、その有する株式の数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を有する。ただし、当該株主が割当てを受ける募集株式の数に1株に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。(会社法202条2項)」と定められているので、各株主への割り当て数に1株未満端数が生じた場合には、それぞれが切り捨てられて終了し、端数の合計の任意売却といったことは行われないことになります。
1株未満の端数が生じる可能性がある手続きは慎重に
これまで見てきた通り、計算上1株未満の端数が生じる形で手続きを行うと、非常に複雑になり手間もかかってしまいます。
あえて1株未満の端数を発生させる場合も含め、慎重にご検討いただくことが望ましいです。
ご参考にしていただけますと幸いです。