代表取締役の変更登記に際して押印する印鑑と印鑑証明書の要否についてお悩みではございませんか
代表取締役の変更登記を行う場合、代表取締役を定めた株主総会議事録や取締役の互選書、取締役会議事録などを添付することになります。
また、就任承諾書の添付が必要となるケースも多いです。
この代表取締役を定めた議事録や就任承諾書などの書面については、場合によっては登記手続きを行うために個人実印の押印と印鑑証明書の添付が必要となります。
代表取締役の変更登記に際しては、個人実印を押印する必要あるのか、印鑑証明書の添付が必要ケースなのか、判断に迷われることも多いかと存じます。
今回は、代表取締役の変更登記における個人実印の押印と印鑑証明書の添付について記載します。
代表取締役の変更登記には個人実印の押印と印鑑証明書について注意が必要となるポイントが2種類ある
代表取締役の変更登記の際に、個人実印の押印と印鑑証明書について注意しなければならないポイントは2種類あります。
それは、就任承諾書と代表取締役の選定議事録の2種類になります。
就任承諾書には代表取締役になる方の個人実印の押印と印鑑証明書の添付が原則
原則として、代表取締役としての就任承諾書または取締役としての就任承諾書に個人実印を押印して印鑑証明書を添付することになります。
取締役会を設置していない会社では取締役としての就任承諾書に押印した印鑑について、取締役会設置会社では代表取締役としての就任承諾書に押印した印鑑についての印鑑証明書の添付が必要となります。
※取締役会設置会社では、代表取締役にはならずに取締役としてのみ就任する方については就任承諾書に加えて(印鑑証明書の添付が必要となる場合を除き)本人確認証明書が必要となります。
また、代表取締役としての就任承諾書が必要かどうかについては、代表取締役の選定方法によって変わりますが、代表取締役としての就任承諾書が不要な場合でも、取締役としての就任承諾書が必要となる場合には、印鑑証明書の添付が問題となります。
再任の場合には就任承諾書に押印した印鑑についての印鑑証明書の添付は不要
就任承諾書に押印した印鑑についての印鑑証明書については、再任の場合は不要とされています。
※これは、もともと印鑑証明書の添付を求める理由が、当該取締役または代表取締役の実在性の確認を目的とするものでしたので、再任の場合には再度実在性を確認する必要はないとの理由になります。
(取締役会を設置していない会社で、既に取締役として登記されている方を代表取締役に選んだ場合も、既に取締役として登記する際に印鑑証明書を添付しているため、再度の添付は不要となります。)
代表取締役の選定議事録についても所定の方の個人実印の押印と印鑑証明書の添付が原則
代表取締役の選定議事録とは、その代表取締役を選んだ株主総会議事録や取締役の互選書、取締役会議事録のことを指しています。
登記手続きに際しては、代表取締役の選定方法に応じて、それぞれ次のような書類が代表取締役の選定議事録に該当します。
・各自代表の場合(取締役会を設置しない会社において代表取締役を定めない場合)
取締役を選任した株主総会議事録
※各自代表の場合(取締役会を設置しない会社において代表取締役を定めない場合)には、すべての取締役が代表取締役となります。
・定款に直接代表取締役を定める場合
代表取締役を定める定款変更についての決議を行った株主総会議事録
・株主総会決議によって代表取締役を定めた場合
代表取締役を定めた株主総会議事録
・定款の定めに基づく取締役の互選によって代表取締役を定める場合
代表取締役を定めた取締役の互選書
・取締役会設置会社の場合
代表取締役を定めた取締役会議事録
※定款の定めに基づいて株主総会で代表取締役を定めた場合には、その株主総会議事録
代表取締役の選定議事録について個人実印の押印と印鑑証明書の添付が必要となるのは、それぞれ次のようになります。
・代表取締役の選定議事録が株主総会議事録の場合
(取締役会設置会社において、定款の定めに基づき株主総会で代表取締役を定めた場合を含む)
議長および出席した取締役
・代表取締役の選定議事録が取締役の互選書の場合
各取締役
・代表取締役の選定議事録が取締役会議事録の場合
出席した取締役および監査役
このように、代表取締役の変更登記に際しては、代表取締役を定めた選定議事録について、かなりの人数の個人実印の押印と印鑑証明書の添付が必要となるケースがあり得ます。
これは、代表取締役を選ぶという行為は非常に重要ですから、他の取締役などの賛同のもとに選ばれているかどうかを確認するために求められています。
変更前の代表取締役が登記所に提出した届出印(会社実印)の押印をしているときは印鑑証明書の添付は不要となる
代表取締役の選定議事録への個人実印の押印と印鑑証明書の添付は、変更前の代表取締役が登記所に提出した届出印(会社実印)を押印しているときには不要となります。
これは、変更前の代表取締役が会社実印を押印していれば、その代表取締役の選定が他の取締役などの賛同のもとに行われたことが推認できるためになります。
具体的には、代表取締役の重任の場面で引き続き同じ方が代表取締役を続けるような場合に会社実印を株主総会議事録や取締役会議事録に会社実印を押印するケースや、代表取締役の交代の場面で旧代表取締役が代表権のない取締役や監査役となり取締役会議事録に会社実印を押印するケースなどがあります。
※代表取締役の交代の場面では、新代表取締役は(登記の添付書面としては不要でも)印鑑届出のために印鑑証明書が必要となりますので注意が必要です。
代表取締役の変更登記については印鑑証明書が必要かどうか確認することが大切です
代表取締役の選定議事録や就任承諾書については、かなりの人数の個人実印の押印と印鑑証明書の添付が必要となる場合があり得るため、省略できるケースかどうかの確認は、書類準備の手間を大きく左右する重要なポイントです。
そのため、個人実印の押印と印鑑証明書の添付が省略可能かどうかの確認がとても大切になります。
ご参考にしていただけますと幸いです。