合同会社の社員に関する登記でお悩みではございませんか
合同会社においては、業務執行社員と代表社員に関する事項が登記されます。
業務執行社員とは、株式会社の株主と役員を兼ねる立場に近いですが、法人もなることができるといった違いもあります。
今回は、合同会社の社員に関する登記について記載いたします。
合同会社では業務執行社員と代表社員に関する事項が登記される
合同会社では、個人(自然人)がなる場合には、業務執行社員の氏名、代表社員の氏名及び住所が登記されます。
これは、株式会社において取締役の氏名と代表取締役の氏名及び住所が登記事項とされていることと似ています。
業務執行社員の氏名を登記し、その中から合同会社を代表する代表社員の氏名及び住所をさらに登記するのは、株式会社における取締役と代表取締役の登記の構造と同じです。
合同会社では所有と経営が分離していない
株式会社における取締役・代表取締役と同じように登記される業務執行社員・代表社員ですが、そこには違いもあります。
株式会社は、所有者は株主で、株主から委任されて経営を行うのが取締役です。
株主が直接取締役となって経営することも可能ですが、株主ではない者が取締役になることも可能です。
一方、合同会社では所有者である社員が、経営を行う業務執行社員となる必要があります。
社員ではない者に対して取締役のように経営を委任することはできません。
合同会社では法人も業務執行社員になることができる
株式会社においては、法人が取締役になることはできません。
※法人であることは取締役の欠格事由であるとされています(会社法331条1項)。
※株式会社においても法人が株主になることは可能です。
一方、合同会社では、法人が社員はもちろん業務執行社員や代表社員になることもできます。
そして、法人が業務を執行する社員となる場合には、職務執行者を選任しなければならないとされています(会社法598条1項)。
これは、現実に合同会社の職務を執行する個人(自然人)を職務執行者というかたちで明確にしておく必要があるためになります。
職務執行者は業務執行社員となるのは法人の代表者には限られない
職務執行者については特に制限があるわけではないので、業務執行社員となっている法人の代表者に限られるといったことはありません。
たとえば、株式会社が合同会社の業務執行社員になっているような場合に。その代表取締役を職務執行者にすることも可能ですし、他の取締役や従業員、顧問弁護士やコンサルタントなどを選任することも可能であるとされています。
※業務執行社員である法人の代表者が当然に職務執行者になるわけではないですので、法人の代表者を職務執行者にする場合には、代表者を職務執行者に選任する手続きを行う必要があります。
職務執行者の選任は取締役会決議などで行う
職務執行者の選任は、業務執行の決定機関とされています。
そのため、たとえば取締役会を設置している株式会社では、取締役会の決議で選任することになります。
(取締役会を設置していない株式会社では、取締役の過半数の一致になります。)
法人が代表社員となった場合には職務執行者の氏名および住所も登記事項となる
法人である業務執行社員が代表社員になった場合には、職務執行者の氏名および住所も登記事項となりますので、登記が必要となります。
職務執行者の登記に際しては、職務執行者を選任した取締役会議事録などを添付することになります。
なお、職務執行者が登記事項となるのは、法人である業務執行社員が代表社員になったときですが、代表社員ではなくても業務執行社員であれば(登記事項にならなくても)職務執行者を選任自体はする必要があるので注意が必要です。
法人が代表社員となった場合の印鑑届書の添付書面
法人が代表社員となった場合にも、合同会社の会社実印を届出ることができます。
この法人が代表社員となった場合の印鑑届書の添付書面は、個人(自然人)が代表社員となった場合とは異なりますので注意が必要です。
※個人(自然人)が代表社員となった場合には、その代表社員の個人(自然人)として印鑑証明書が添付書面となります。
法人が代表社員となった場合の印鑑届書には次のような書面を添付します。
【法人の代表者が職務執行者になる場合】
・当該法人の代表者事項証明書
・当該法人の代表者が登記所に印鑑を提出していない場合には、印鑑届書に押された当該代表者印の印鑑証明書
【法人の代表者でない者が職務執行者になる場合】
・当該法人の代表者事項証明書
・当該法人の代表者の保証書
(この保証書には、届出する合同会社の会社実印と保証する法人の代表者印を押印します。)
・当該法人の代表者が登記所に印鑑を提出していない場合には、保証書に押された当該代表者印の印鑑証明書
合同会社の業務執行社員については株式会社の取締役との相違点に注意
合同会社の業務執行社員については、株式会社の取締役と近い部分もありますが、所有と経営が分離していない、法人がなることができるなどの違いもあります。
法人がなった場合などの合同会社の業務執行社員に固有の事項をよくご確認いただくことが大切です。
ご参考にしていただけますと幸いです。