吸収合併の登録免許税の計算でお悩みではございませんか
吸収合併による変更登記の登録免許税は、原則として増加する資本金の額の1000分の1.5とされていますが、実際には資本金を増加しないことも多いです。
資本金を増加しない場合にはどうなるのでしょうか。
また、一定の額を越えた部分については、増加する資本金の額の1000分の7になりますが、この計算が少し複雑になることもあります。
今回は、実は複雑な吸収合併による変更登記の登録免許税についてご説明します。
(存続会社も消滅会社も株式会社の場合の前提)
資本金が増加しない場合の登録免許税
吸収合併の場面では、無対価で完全子会社を吸収合併する場合など、資本金を増加しないケースも多いですので、まずはこちらのパターンからご説明します。
※合併対価として存続会社の株式を全く発行しない場合には、資本金を増加することができません。完全子会社を吸収合併する場合には、対価を発行することができないため、必然的に資本金が増加しないことになります。
※また、対価として株式を発行する場合でも、募集株式の発行(増資)と異なり、資本金等増加限度額の2分の1以上を資本金に計上しなければならないといった制約がないため、全額資本準備金や資本剰余金に計上され、資本金が増加しないこともあります。
結論から申し上げますと、資本金の額を増加しない場合の吸収合併による変更登記の登録免許税は、3万円となります。
当たり前のようですが、ひとつ注意点があります。
資本金の額を増加しない場合には、登録免許税の区分が別表第1第24号(1)ツの区分となります。
(ツ区分は、商号変更や目的変更と同じ区分です。そのため、例えば資本金が増加しない吸収合併による変更登記と目的変更を同じ申請書で申請した場合は、全体の登録免許税は3万円で済みます。)
資本金の額が増加する場合も計算結果が3万円未満のときには登録免許税額は3万円となりますが、資本金の額が増加しない場合は、そもそも登録免許税の区分が変わるということですね。
資本金の額が増加する場合の登録免許税
資本金が増加する場合には、吸収合併による変更登記の登録免許税は、原則として資本金の増加額の1000分の1.5となり(登録免許税法別表第1第24号へ)省令で定める額を上回る部分については1000分の7です。
吸収合併の対価が存続会社の新株式のみである場合には、消滅会社の資本金の額を超える額について1000分の7となります。
そして、合併対価に存続会社の新株式と新株式以外の財産が併存している場合には、1000分の1.5の税率が適用される範囲が単に消滅会社の資本金の額までではなくなり、これを計算することになります。
(平成19・4・25「登録免許税法施行規則及び租税特別措置法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて(通達)」法務省民商第971号)
※1000分の1.5の税率が適用される範囲が新株式対応部分に限定するためになります。
対価に新株式と新株式以外の財産が併存する場合の計算
上記先例に従い、1000分の1.5の税率が適用される範囲は次のように計算されることになります。
D÷B×A=1000分の1.5の税率が適用される範囲の金額
A:吸収合併直前の消滅会社の資本金の額
B:吸収合併直前の消滅会社の(資産-負債)の額
※(資産-負債)の額が、Aの資本金の額以下である場合は、Aの資本金の額となる。
C:吸収合併対価のうち存続会社の新株式以外の財産の価格
D:(B-C)の額
※(B-C)の値が、負の値となる場合は、零とする
上記の式を見て頂くとわかる通り、吸収合併対価が存続会社の株式のみである場合には、Cが0となりますので、D=Bとなり、1000分の1.5の税率が適用される範囲の金額はAの吸収合併直前の消滅会社の資本金の額となります。
上記した通り、合併対価は存続会社の株式のみであることが多いと思いますので、殆どのケースでは吸収合併直前の消滅会社の資本金の額までが1000分の1.5の税率が適用されると考えて差し支えないでしょう。
合併対価に存続会社の新株式と新株式以外の財産が併存する場合には、少し複雑ですが、上記の計算が必要となりますので、ご注意ください。
資本金の額が増加する場合には証明書の添付も必要となる
資本金の額が増加する場合には、このような計算内容を確認するために、必要事項を記載した証明書の添付も必要となります。
(登録免許税法施行規則第12条第5項の規定に関する証明書)
対価が新株式のみである場合も、証明書の添付は必要となります。
吸収合併の登録免許税はよくご確認を
このように、吸収合併による変更登記は、資本金が増加するのかしないのか、対価が新株式のみか他の財産と併存するのかによって、登録免許税の算定方法が大きく変化します。
合併契約書の内容などをよくご確認いただき、登録免許税をご計算ください。
ご参考にしていただけますと幸いです。