新株予約権とその登記についてお困りではございませんか
新株予約権は、その内容と募集事項として多くの事項を定める必要がありますが、登記事項になるものとならないものがあります。
そのため、新株予約権の発行の登記の際には、登記事項になるものを選んで登記する必要があります。
また、行使期間の満了や新株予約権付き社債の償還など、何もしていなくても一定の期間を経過することで登記が必要となる場合や、株式の分割や併合に伴い調整式によって新株予約権の変更登記が必要となる場合もございます。
このように新株予約権は、発行、行使、行使期間の満了など、多くの場面で登記が関わってきます。
今回は、そんな新株予約権とその登記についての気を付けておきたいポイントを記載いたします。
(種類株式を考慮すると記載が煩雑になり読みにくくなってしまいますので、こちらでは単一株式発行会社の前提で記載いたします。)
新株予約権の内容は登記事項になるものとならないものがある
新株予約権を発行する際には、その内容と募集事項として定めなければならない事項が法定されています(会社法236条1項、会社法238条1項)。
新株予約権の内容
★新株予約権の目的である株式の数または算定方法
★行使の際に出資される財産の価格または算定方法
★上場会社が取締役報酬等として発行する場合等に関する事項
★行使に際して現物出資がされる場合には、その旨および現物出資財産の内容および価額
★行使期間(その他の行使条件)
・一部を資本金としない場合には、増加する資本金および資本準備金に関する事項
・譲渡制限新株予約権とする場合には、その旨
★取得条項付新株予約権とする場合には、その旨および取得条項に関する内容
・組織再編に際して存続会社等の新株予約権を交付することとする場合には、その旨および条件
・新株予約権の行使により交付する株式の端数を切り捨てることとする場合には、その旨
・新株予約権証券を発行する場合には、その旨
・記名式、無記名式証券の転換を禁止する場合には、その旨
他の募集事項
★募集新株予約権の数(※)
★発行に際して金銭の払込を要しないこととする場合には、その旨
★発行に際して金銭の払込を要することとする場合には、払込金額
・割当日
・払込期日を定める場合には、払込期日
・募集新株予約券付き社債を発行する場合には、社債の募集事項
・募集新株予約権付き社債の新株予約権買取請求の方法につき別段の定めをする場合には、その定め
上記の事項のうち、登記事項となるのは★マークのついているもののみです。
譲渡制限の定めや、行使時に一部を資本金ではなく資本準備金に計上する旨などの事項が登記事項ではない点に注意が必要です。
※新株予約権の数については、実際に発行した数が登記事項となります。
新株予約権の行使と登記
新株予約権が行使された際には、それに伴う登記が必要となります。
行使された分の新株予約権の数と目的である株式数を変更するほか、新株予約権が行使されたことにより新たに株式を発行した場合には、発行済株式数および資本金の額の変更登記も行うことになります。
※自己株式のみを交付した場合には、発行済株式総数と資本金の額は変動しません。
新株予約権の行使の際の添付書面に新株予約権の発行の際の議事録が必要になる場合がある
新株予約権を行使した際に、新株予約権の発行の際の議事録が添付書面として必要になる場合がありますので注意が必要です。
新株予約権の内容として、新株予約権発行の際に資本金として計上しない額を定めた場合でも、先ほど記載した通り、この定めは登記事項にはなりません。
※募集株式の発行の場合と同じく、2分の1まで資本準備金に計上することができます。
そのため、2分の1を資本金に計上し、残りの2分の1を資本準備金に計上すると定められていることが多いです。
資本金として計上しない額を定めていたとしても、それを新株予約権の行使の際には登記事項からは確認できないため、そのことを確認するために定めがある場合には、新株予約権の発行決議の際の議事録を添付することになります。
※その議事録が株主総会議事録の場合でも、株主リストまでは添付不要とされています。
新株予約権は行使期間の満了など何もしていなくても登記が必要となることがある
新株予約権は、その内容として行使期間を定める必要があります。
この行使期間が満了するまでに行使されなかった新株予約権は、行使期間が満了したときに消滅します。
この場合には、当然新株予約権が行使期間満了によって消滅したことの登記を行う必要があります。
会社として能動的に何もしていなくても、期間の経過によって登記が必要となるケースですので、注意が必要です。
同じように、新株予約権付社債について、社債の償還によって消滅する場合もありますので、同様に注意が必要です。
株式の分割や併合などによって新株予約権の変更登記が必要となる場合がある
新株予約権は発行から行使までに時間的間隔があるため、その間に株式の分割や併合などが行われた場合でも新株予約権の経済的な価値が変わらないように、新株予約権の目的である株式数や払込価額が分割や併合の割合で合わせて変動するように調整式が設けられている場合が多いです。
このような調整式が設けられた新株予約権が発行されている場合には、株式の分割や併合を行った際に、その分割や併合の登記と併せて新株予約権の変更登記も必要となりますので注意が必要です。
新株予約権は登記が関係する機会が多いですので登記事項をよくご確認ください
新株予約権は、発行から行使または消滅まで様々な場面で登記が必要となることがあります。
行使期間の満了や株式の分割または併合の際の調整式による変更など、直接的に新株予約権に対して決議を取るなどの行為をしていなくても登記が必要となることもありますので、よく登記事項をご確認いただくことが大切です。
ご参考にしていただけますと幸いです。