株式会社から合同会社への組織変更についてお困りではございませんか
株式会社を合同会社に変更する場合と同様に、組織変更の手続きを行うことで株式会社を合同会社に変更することができます。
今回は、株式会社から合同会社への組織変更について記載いたします。
株式会社は組織再編の手続きを行うことで合同会社になることができる
株式会社は組織変更の手続きを行うことで合同会社になることができます。
※他の持分会社である合名会社・合資会社に組織変更することも可能です。
株式会社から合同会社への組織変更を行うための手続きの流れは会社法に法定されています。
株式会社から合同会社へ組織変更するために組織変更計画を作成する
株式会社から合同会社への組織変更をするためには、まずは組織変更計画を作成し、その組織変更の内容を定めます。
組織変更計画では、主に組織変更後の合同会社の商号・目的・本店所在地・社員に関する事項といった定款で定める事項や組織変更前の株主に交付する対価などを定めます。
この組織変更計画は、株式会社の総株主の同意によって承認される必要があります。
※株主総会決議ではなく、総株主の同意になる点に注意が必要です。
株式会社の株式により平均化された資本多数決の組織体制から、合同会社の組合組織に近い頭数での同意を原則とした組織体制に移行するため、株主(社員)への影響は非常に大きく、総株主の同意が必要です。
組織変更後の合同会社の商号や目的
組織変更計画で定める、組織変更後の合同会社の商号や目的は、組織変更前のものと合わせる必要はないとされています。
そのため、「株式会社●●」から「合同会社▲▲」に組織変更するといったことも可能とされています。
また、組織変更後の合同会社の目的を新規のものにすることも可能です。
組織変更後の合同会社の本店
組織変更の手続きで本店の住所は変えられません。
組織変更の手続きは、会社形態の変更ですので、現実的な住所の移転が含まれるものではないからです。
組織変更後の資本金の額
組織変更の前後では資本金の額は変わりません(会社計算規則33条)。
つまり、組織変更前の株式会社の資本金の額と同じ額の資本金の額の合同会社になるという事になります。
そのため、組織変更前の株式会社の謄本から資本金の額が確認できるため、資本金に関しては添付書面が不要とされています。
組織変更後の社員
組織変更後の合同会社の社員には、組織変更計画の定めに従い組織変更前の株式会社の株主がなります。
※株式以外の財産を交付することも認められていますが、実務上はほとんど行われていません。
株式会社から合同会社への組織変更には債権者保護手続きが必要となる
株式会社から合同会社への組織変更のために、債権者保護手続きを行う必要があります。
債権者から見たときにも株式会社から合同会社への組織変更によって会社の形態が変わる影響は大きいため、債権者保護手続きを要求していると考えられます。
債権者保護手続きとしては、原則として、官報公告と知れている債権者への個別催告を行うことが必要になります。
公告および催告に記載する必要がある事項は、「組織変更をする旨」「最終貸借対照表の要旨など(会社法施行規則181条に規定されています)」「債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨」の3点になります。
そして、この債権者が異議を述べることのできる一定の期間は、1か月以上の期間が必要になります。
そのため、官報公告の申込から掲載までの期間なども考慮に入れると、組織変更の手続きは最短でも2か月程度はかかることになりますので、スケジュールを組む際はご注意ください。
また、知れている債権者への個別催告については、定款で公告方法を日刊新聞紙または電子公告としている場合には、官報公告に加えて定款所定の日刊新聞紙または電子公告でも公告することで省略することができます。
この場合でも、債権者が異議を述べることのできる一定の期間は、1か月以上の期間が必要になりますので、スケジュールを組む際は期間にご注意ください。
組織変更計画への総株主同意と債権者保護手続きが完了すると効力発生できる
組織変更の効力は、組織変更計画への総株主同意と債権者保護手続きが完了すると、組織変更計画で定めた効力発生日に効力が生じます。
※登記は効力発生要件ではありません。
効力が発生したら、登記を申請することになります。
株式会社から合同会社への組織変更の登記は設立登記と解散登記の方法で行う
組織再編の手続きは、あくまでも会社の形態の変更なので、法人格そのものが新しくなるわけではなく、会社としての成立年月日も変わりません。
ですが、登記手続きでは合同会社の設立登記と株式会社の解散登記を行うことになります。
これは、株式会社から登記記録の形式がことなる合同会社に移行するため、一度株式会社の登記記録を閉鎖して、合同会社の登記記録を再度創設する必要があるからになります。
組織変更の手続きについては余裕をもったスケジュールを組むことが大切
組織変更の手続きには、債権者保護手続きが必要になるために最短でも2か月程度の期間が必要になります。
あらかじめ余裕を持ったスケジュールを組んでいただくことが大切です。
ご参考にしていただけますと幸いです。