種類株式を発行している会社での募集新株予約権の発行についてお悩みではございませんか
種類株式を発行している会社で募集新株予約権を発行するときに、決議事項がどうなるのか、種類株主総会決議が必要なのか、といったところに迷われる方が多いようです。
どのような場合に種類株主総会決議が必要となるのかの判断はとても大切です。
今回は、よくある非公開会社である種類株式を発行している会社での募集新株予約権の発行(第三者割当の場合)について記載いたします。
どのような場合に種類株主総会決議が必要になるのか
種類株式を発行している会社が募集新株予約権の発行をするとき、どのような場合に種類株主総会決議が必要になるのでしょうか。
種類株式を発行している会社においては、募集新株予約権の目的が譲渡制限株式である場合には、当該種類株式の種類株主総会特別決議が必要とされています(会社法238条4項)。
これはつまり、新株予約権を行使した際に新株予約権者が取得することとなる種類株式の種類株主総会の特別決議が必要になるということです。
(非公開会社ではすべての種類株式に譲渡制限の定めが付されています。)
種類株式を発行している会社で募集新株予約権を発行する際は、新株予約権の内容を確認し、新株予約権を行使した際に発行される株式の種類を確認することが大切です。
取締役会に募集事項の決定を委任する場合も種類株主総会特別決議は必要となる
募集新株予約権の発行について、株主総会で募集新株予約権の数の上限と払込金額の下限を定めて、取締役会(取締役会非設置会社では取締役の過半数の一致)に発行決議を委任することができます(会社法239条1項から3項まで)。
(委任の効力は、株主総会の決議の日から1年以内の日を割当日とする発行決議までになります。)
このような決議の委任に際しても、種類株式を発行している会社では種類株主総会特別決議が必要となります。
種類株主総会が必要となる種類株式は、新株予約権を行使した際に新株予約権者が取得することとなる種類株式(その種類株式が譲渡制限株式である場合)であるところは同じです。
(非公開会社ではすべての種類株式に譲渡制限の定めが付されています。)
なお、発行決議を委任する場合でも、新株予約権の内容は確定的に定めてから委任する必要があるとされているため、新株予約権を行使した際に新株予約権者が取得することとなる種類株式も定めて委任する必要があります。
種類株主総会の特別決議は定款で定めることで不要とすることができる
この募集新株予約権の発行に際して必要となる種類株主総会特別決議は、定款に定めることで不要とすることができます。
種類株式を発行している会社で募集新株予約権を発行する際には、種類株主総会の特別決議を要しないとする定めがあるかどうかも必ず確認するようにしてください。
新株予約権に取得条項が付与され取得対価が他の新株予約権の場合
ときどき新株予約権の内容として取得事由とする取得条項が定められており、取得の対価として他の新株予約権を交付する旨が定められているものがあります。
新株予約権を直接行使した場合に取得することとなる種類株式は優先株式ですが、上記の取得条項の取得対価で交付される他の新株予約権を行使した場合に取得することとなる種類株式は普通株式というようなケースもあります。
※上場申請を目標としている会社で、上場申請する際に優先株式をすべて普通株式に転換することが多いですから、新株予約権についても優先株式を目的とする新株予約権から、普通株式を目的とする新株予約権に転換するための規定でした。
このような新株予約権の発行にさいして、取得条項の取得対価として交付される他の新株予約権を行使した際に新株予約権者が取得することとなる普通株式の種類株主総会決議も必要になるのでしょうか。
このような場合の他の新株予約権を行使した際に新株予約権者が取得することとなる種類株式(上記の例では普通株式)の種類株主総会は不要でした。
先ほどのケースでは、種類株主総会議事録に関しては直接新株予約権を行使した場合に新株予約権者が取得することとなる優先株式の種類株主総会議事録のみを添付して登記申請も問題なく受理されました。
会社法第238条4項において、種類株式発行会社では募集新株予約権の目的である種類株式(当該種類株式が譲渡制限株式である場合)の種類株主総会決議が要するとの定め方ですから、募集する新株予約権の目的はあくまでも優先株式です。
取得条項の取得対価として交付される他の新株予約権の目的である普通株式は対象外と考えて問題ないようです。
種類株式を発行する会社で募集新株予約権を発行する際は新株予約権の内容と定款の確認が大切
種類株式を発行する会社で募集新株予約権を発行する場合には、種類株主総会が必要になるのかどうか、必要ならどの種類の種類株主総会が必要になるのかを判断するために、募集新株予約権の内容と定款の定めを確認することが大切です
ご参考にしていただけますと幸いです。