議事録への押印についてお悩みではございませんか
株主総会を開催していただいたら株主総会議事録を作成する必要があります(会社法第318条1項)。
同様に、取締役会を開催していただいたら取締役会議事録を作成する必要があります(会社法第369条3項、4項)。
議事録を作成されたときに、作成した株主総会議事録や取締役会議事録に、押印が必要かどうかについて迷われる方も多いようです。
基本的には会社法や定款の定めに従い押印について判断することになりますが、登記手続きに際して会社実印や個人実印の押印が必要になる場合もございます。
今回は、判断に迷うことも多い議事録への押印について記載いたします。
株主総会議事録については会社法には押印について定められていない
株主総会議事録については、会社法には特に署名や押印を求める規定は存在しません。
そのため、会社法上は全く押印のされていない株主総会議事録も問題なく有効です。
※後述する、定款で押印について定めている場合や株主総会決議で代表取締役を定めた場合の商業登記規則で押印が求められるケースを除き、押印の無い株主総会議事録を添付しても登記手続きは可能です。
定款で株主総会議事録への押印について定めている会社も多い
実際には、定款で株主総会議事録への押印について定めている会社も多いです。
具体的には、出席取締役全員が押印すると定めているケースと、議長が押印すると定めているケースが多いです。
定款で株主総会議事録への押印についての定めがあれば、その定めに従い押印をしていただく必要があります。
定款に定めがなかったとしても、原本であることを明確にする観点から、任意に押印をしていただくケースが多く、定めがなくとも議長議事録作成者に会社実印を押印いただくことをおすすめしています。
登記手続きのために株主総会議事録への押印が求められるケースもある
登記手続きのために法務局へ提出する株主総会議事録への押印が商業登記規則で定められているケースがあります(商業登記規則61条6項)。
株主総会決議で代表取締役を定めた場合です。
このような場合には、定款に株主総会議事録への押印について定められていなくとも、登記手続きのために株主総会議事録へ押印をしていただく必要があります。
具体的には、変更前の代表取締役が届出印(会社実印)を押印いただくか、議長および出席取締役全員が個人実印を押印いただく必要があります。
(議長及び出席取締役全員に個人実印を押印いただいた場合には、全員の個人印鑑証明書も必要となります。)
代表取締役が重任される場合などは、変更前の代表取締役が株主総会に出席し、株主総会議事録に届出印(会社実印)を押印すればそれで足りますので、その他の出席取締役の個人実印の押印や個人印鑑証明書は必要ありません。
変更前の代表取締役が株主総会に出席できないなど、変更前の代表取締役が株主総会議事録に届出印(会社実印)を押印できない場合には、上記の通り議長および出席取締役全員が個人実印を押印し、なおかつ全員の個人印鑑証明書が必要となりますので注意が必要です。
一般社団法人の社員総会議事録も法令上は押印について定められていない
一般社団法人における社員総会議事録も一般社団法人及び一般財団法人に関する法律において、署名や押印に関する規定が存在しません。
そのため、株主総会議事録と同様に、法令上は署名や押印は不要です。
定款において、社員総会議事録への押印についての定めがされている場合も多く、その場合には定款の定めに従い押印が必要となる点も同様です。
商業登記規則の規定が準用されており、社員総会の決議によって代表理事を定めた場合に、登記手続きに用いる議事録には押印が必要となる点も、やはり同様です。
取締役会議事録については会社法に押印についての規定がある
次に取締役会議事録についてみていきましょう。
取締役会議事録については明確に押印について「出席した取締役及び監査役は、署名又は記名押印をしなければならない」旨が規定されているので、こちらは出席取締役および出席監査役の署名又は記名押印が必要になります(会社法369条3項・4項)。
※署名又は記名押印とはなってはいますが、実際にはほとんどの会社が記名押印の方法で取締役会議事録を作成しています。
特に印鑑の種類については会社法には定めはありませんので認印で問題ございませんが
後述する取締役会決議で代表取締役を定めた場合には会社実印または個人実印の押印が必要となります。
登記手続きのために取締役会議事録へ実印の押印が求められる場合がある
登記手続きのために法務局へ提出する取締役会議事録に押印いただく印鑑について商業登記規則で定められているケースがあります(商業登記規則61条6項)。
取締役会において代表取締役を定めた場合です。
この場合には、変更前の代表取締役が届出印(会社実印)を押印していない限り、出席取締役および出席監査役の全員が個人実印を押印する必要があります。
※出席取締役および出席監査役の全員の個人印鑑証明書も必要となります。
代表取締役が重任されるや取締役としては留任される場合など、変更前の代表取締役が取締役会に出席し、取締役会議事録に届出印(会社実印)を押印することができればそれで足りますので、その他の出席取締役および出席監査役の個人実印の押印や個人印鑑証明書は必要ありません。
変更前の代表取締役が取締役会に出席できないなど、変更前の代表取締役が取締役会議事録に届出印(会社実印)を押印できない場合には、上記の通り出席取締役および出席監査役全員が個人実印を押印し、なおかつ全員の個人印鑑証明書が必要となりますので注意が必要です。
一般社団法人の理事会議事録についても法令に押印についての定めがある
一般社団法人における理事会議事録も一般社団法人及び一般財団法人に関する法律95条3項に「出席した理事及び監事は、署名又は記名押印をしなければならない」旨が規定されているので、原則として出席理事および出席監事全員の署名又は記名押印が必要になります。
なお、一般社団法人では定款で定めることにより、理事会議事録に署名又は記名押印する者を出席した代表理事及び監事とすることもできます(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律95条3項かっこ書)。
議事録への押印の判断には定款と登記手続き上の要請のご確認が必要になります
このように、株主総会議事録や取締役会議事録への押印のご判断には、定款の定めや登記手続き上の要請の有無をご確認いただく必要がございます。
特に、代表取締役の交代の場面では登記手続きのために、会社実印や個人実印の押印が求められるケースが多いですので、慎重にご判断ください。
ご参考にしていただけますと幸いです。